こどもの本

私がつくった本55
集英社 大森敦子

(月刊「こどもの本」2014年5月号より)
ねこの手かします(既刊4冊)

氷の巨人 コーリン
サカリアス・トペリウス/原作、スズキコージ/文・絵
2014年2月刊行

 サカリアス・トペリウスの『木いちごの王さま』は絵本にできる!と思ったのは、児童書編集部に異動になり、過去の出版物を資料室でチェックしていた時。「岸田衿子」の文字が眼に入り、「母と子の名作童話」シリーズ29巻を手に取りました。「おしのパーポ」など4話が収められたその1冊の第1話『木いちごの王さま』を読み始めると─小さな虫をやさしく手に取る女の子、木いちごの森、そこでの不思議な出来事……心に響く優しい言葉の流れが、ページをめくって現れる情景に変わったのです。

 まずは絵本化の承諾を、と岸田さんのお宅に伺ったその日、岸田さんはとても好きだというトペリウスの魅力を語り、美しい絵になる作品がたくさんあるのよ、といろいろ教えてくださいました。次は、巨人と黒い小人が出てくるお話ですね、などと話がはずみましたが、できあがった絵本『木いちごの王さま』をご覧になって、「気に入りました。とても気に入っています。」とおっしゃった2ヵ月後に、岸田さんはスミレの花陰に隠れてしまわれました。

 その後、スウェーデン在住の翻訳家・長下日々さんに、巨人と黒い小人が登場するこんなお話を探して欲しい、と無責任なお願いをしたのですが、お返事は─いくつかの図書館に何回か足を運び、行くたびに違う司書さんにたずねて出てくる作品は、似て非なるもの。さすが地元の子どもたちに「おはなしのおじさん」と呼ばれている「フィンランドのアンデルセン」の作品数は相当のもの、とのことでした。ちなみに、トペリウスはフィンランドのスウェーデン語地区で生まれ育ち、作品はすべてスウェーデン語で書かれています。

 送られてきた物語は、時代にずれた巨人の一挙手一投足がユーモラスで、意外な展開も絵本向き。そして最後の子どもの言葉には、現代にも通用するメッセージがありました。岸田さんとの話の中で、スズキコージさんの名前が出て、でかい図体の巨人と黒い小人のコンビを描いてもらうならコージさん!と決めていたこともあり、今回の絵本『氷の巨人
コーリン』が完成したのです。

 それにしても、コージさんの構成力には感服しました。雪と氷の世界で繰り広げられる56ページを、少しも飽きずに読ませてくれます。巨人の表情─目玉に注目してください─としぐさを追うだけでも楽しめるはずです。物語の転調も大胆に魅せてくれます。何よりも嬉しいのは、冷たく凍っているはずの巨人を、子どもと真剣に向き合う誠実であたたかいハートの持ち主に描いてくれたことです。

「賢くて意地悪な人よりも、少しマヌケでも優しい人のほうがずっと素敵です。」この言葉が、子どもだけでなく大人の心にも残ってくれる絵本になってくれたらいいな、と思っています。