こどもの本

私がつくった本29
国土社 細井美智子

(月刊「こどもの本」2011年10月号より)
小さなりゅう

『小さなりゅう』
『小さなりゅう 空をとぶ』
『小さなりゅう と 海のともだち』
長井るり子/作、小倉正巳/絵
2009年5月〜2011年11月

  からっぽ からっぽ からっぽだ
  ぼくの おなかは からっぽだ
  だけど ぐうぐう こえがする
  いったい だれが いるのかな

 生まれたばかりのりゅうのあかちゃんは、食べものをさがして、うたいながら歩いていきます。

「小さなりゅう」の本作りは、一冊の同人誌にこの歌をのせた物語を見つけたことからはじまりました。

 育ちざかりの子どもたちは、いつだって成長するためのエネルギーを求めています。ぺこぺこのおなかを満たす食べものがほしい。そして、いまだ知らない世界を知りたい、と。

 小さなりゅうのうたう歌は、そんな育ちざかりの子どもたちの心そのままに、生きるよろこびに満ちた声が胸にひびいてくるようでした。わたしはたちまちその物語に夢中になり、作者の長井るり子先生に熱をこめた手紙を書いていました。

 お会いした長井先生は、熱意ばかりが先行する駆け出しの編集にも、やわらかな感性で物語に磨きをかけてお応えくださる、とてもすてきな方でした。そうして動き出した本作りを、やさしい挿絵でひろげてくださったのが、小倉正巳先生です。のびやかに愛らしい造形で、小さなりゅうに命を吹きこみ、海にかこまれた島の風景も奥行き豊かに、すばらしい絵を描いてくださいました。

 こうしてぶじに読者のもとへたどりついた小さなりゅうでしたが、第一作目ではまだ名前を持っていませんでした。そこで続編では、じぶんの名前をさがしだし、さらに翼で空をとぶことがテーマになりました。はたして小さなりゅうが見つけた名前とは? ぜひ本をお手にとっておたしかめください。

 この二作目を送りだしたところで、貴重なご縁にめぐまれ、板橋区の図書館で子どもたちといっしょの絵本作りと原画展のイベントの機会をいただきました。読者たちが目の前でお話を楽しんでくれた時間は、今もわすれられない宝物になっています。

 またその秋、フランクフルトブックフェアへの出品のお誘いをいただき、さらに今年、インターナショナルスクールの読者投票で「さくらメダル」というりっぱなメダルの受賞にあずかりました。続編で空をとんだ小さなりゅうは、文字どおり海をわたって世界へとびだすことになり、思いがけない成長ぶりにおどろかされた次第です。

 食いしんぼうで好奇心いっぱいの小さなりゅうを追いかけて、本作りはつづきます。ただいま進行中の三作目では、小さなりゅうが新しい友だちと出会い、ふしぎな洞窟を探検します。これまですてきなご縁でお力添えくださいましたみなさま、今回初めて手にとってくださるみなさま、どうぞこれからも、小さなりゅうの成長をあたたかく見守ってください。