こどもの本

私の新刊
『魔女じゃないもん!③ リセ&バンビ、危機一髪!!』 宮下恵茉

(月刊「こどもの本」2013年2月号より)
宮下恵茉さん

魔女じゃないもん!

 あれは、一昨年の初夏のこと。

「魔女の話を書いてみませんか?」

 集英社みらい文庫のYさんにそう切り出された時、私は心の中で、(え〜っ、かんべんしてよお〜)と、思っていた。

 だって魔女の話なんて、昔から子どもの本の定番だし、児童文庫では各社から人気の魔女シリーズがこれでもかと出ている。そんな中に、私のような無名作家が、「新しい魔女のシリーズでーす」と乱入して行っても、「てめえは、すっこんでろ!」と追いかえされるに決まっている。

(これは丁重にお断りせねば!)

 意を決して顔を上げたとたん、Yさんは、きらきらした瞳で私を見つめた。

「宮下さんなら、きっと新しい魔女を書けると思うんです!」

 気がつくと私は、「はい、がんばります!」とめっちゃいい返事をしていた。

 そこから、私の聞くも涙、語るも涙の物語が始まる。世の中に魔女の物語があふれているということは、それだけ詳しい人も多いということだ。

 たいして魔法や魔女に詳しくない私は、血眼になって資料を集め、読み漁った。だけどその程度の知識で、壮大な魔女のお話なんて絶対書けるわけがない。

(どうすんの、私。Yさんが、あんなに期待してくれてるというのに!)

 頭を抱えてのたうちまわっていると、突然、一人の女の子が思い浮かんだ。

『魔法少女バンビでーす。きゅるん☆』

 見た目は完璧な魔法少女なのに魔法が使えなくて、魔法なんてあるわけないと思ってる小心者の女の子が実はすごい魔力を持っていたら?

 タイトルもすぐに思い浮かんだ。

『魔女じゃないもん!』

 それから私は、何かにとりつかれたようにパソコンに向かった。

 おかげさまでこの『魔女ない』は、この度三巻を上梓する運びとなった。今、四巻のプロットを練りながらふと思う。あの日、私は魔法をかけられたんじゃないかと。そう思っていたら、Yさんから催促のメールが来た。結論。やっぱりYさんは私に物語を書かせる魔女だ。多分、いや、きっと。

(みやした・えま)●既刊に『真夜中のカカシデイズ』『ジジ きみと歩いた』『あの日、ブルームーンに。』など。

「魔女じゃないもん!③リセ&バンビ、危機一髪!!」
集英社みらい文庫
『魔女じゃないもん!③リセ&バンビ、危機一髪!!』
宮下恵茉・作
和錆・絵
本体600円