こどもの本

我が社の売れ筋 ヒットのひみつ20
『マップス 新・世界図絵』 徳間書店

(月刊「こどもの本」2021年1月号より)
『マップス 新・世界図絵』

こだわりを詰めこんだ大きな本

アレクサンドラ・ミジェリンスカ&ダニエル・ミジェリンスキ 作/徳間書店児童書編集部 訳
2014年9月刊行

『マップス』は、世界四十二の国と地域を、地図とたくさんのイラストで紹介する、かなり大判の絵本です。開くと新聞一ページほどになり、その大きさゆえ、存在感は抜群。近頃ではさまざまな場面で「徳間書店? あ、『マップス』の会社ですね」と言われることも多く、弊社の代表的な一冊となっています。

 この本に出会ったのは、二〇一二年のボローニャ・ブックフェア。他国の編集者から紹介され、ポーランドの原出版社のブースで実物を見せてもらい、その大きさと、ぎっしりと描かれたイラストに圧倒されました。若い絵本作家夫妻が作った本だと言います。その大きさには躊躇もありましたが、「おもしろい!」という気持ちのほうが勝ち、版権を取得することになりました。

 契約の条件には、ポーランドで印刷製本することと、本文デザインを著者が監修することが含まれていました。本の質を原出版社の手元で管理したいからだと言います。著者は文字全般に興味があり、日本語を勉強したこともあるので、見出しとなる「国の名前」を著者が自ら書く、ということも決まりました。

 編集作業が始まってみると、著者のチェックが予想以上の難関でした。まず、日本語の書体で組んだ見本のPDFを送りましたが、タイポグラフィに造詣の深い二人から、なかなかOKが出ないのです。ポーランド語版やその他の欧米の言語の版では、著者が手書き風にデザインしたアルファベットの書体を使っているくらいですから、日本語の組版にもこだわるのは当然でしょう。著者のイメージに近づくよう試行錯誤を重ねました。

 書体が決まり、全ページのレイアウトが進んだあとにも、イラストと文字との間隔など、著者から細部にわたりフィードバックがあり、校了になったときには心からホッとしました。三十以上の言語で翻訳出版されたこの本、ここまでこだわるのは、正直言って著者にも負担だそうなのですが、自分たちの美意識を大切にし、妥協しない姿勢が、本書の「特別感」につながっているのではないかと思います。こうした著者の姿勢には、大いに学ぶところがありました。

 一昨年は、最初の版に二十か国を追加した「愛蔵版」を刊行し、著者の二人を招きました。ワークショップやトークショーを行い、たくさんの方に本書の魅力を知ってもらうことができました(二人は日本のアニメの大ファンで、来日をずいぶん楽しんでいたようです)。

 しばらくは、好きなように海外旅行に出かけることも難しそうですが、ぜひ本書で、世界の国々を旅していただければと思います。

(徳間書店 田代 翠)