こどもの本

我が社の売れ筋 ヒットのひみつ5
「じごくのそうべえ」シリーズ 童心社

(月刊「こどもの本」2018年9月号より)
「じごくのそうべえ」シリーズ

そうべえシリーズは永遠です!
「じごくのそうべえ」シリーズ
田島征彦 作
1978年5月~刊行

 とざい とうざい─。

 軽業師のそうべえ、医者のちくあん、歯抜き師のしかい、山伏のほらをふっかいの四人が、地獄で鬼や閻魔大王を相手に大あばれ─絵本『じごくのそうべえ』は1978年5月に刊行しました。以来40年、田島先生はライフワークとして新作を作り続け、最新刊『そうべえときじむなー』(2018年5月刊)で6作目となりました。シリーズ累計120万部を越えるロングセラーです。

 このヒットを支えてきた、童心社の歴代の編集者に受けつがれてきた「そうべえ」シリーズ専用の道具があります。

 それは縦60センチ、横100センチ程のプラスチック製の薄い透明なシートです。その表面には、細かい目盛りがマジックで縦横に書き込まれています。右下隅から左上隅まで斜めの線が引かれています。縦横の目盛りは1センチ刻みで、各ポイントから垂直に斜めの線に交わり、たくさんの長方形を形作ります。それぞれの長方形の四隅には、錐状のもので小さく穴が開けてあります。

 大小いくつもの長方形の中でも、基準となる長方形は「そうべえ」シリーズの見開きの仕上がり寸法を現し、太く強調されています。この道具は、「そうべえ」シリーズの原画にトレペの上から重ねて、拡大・縮小のためのトリミングの位置決めをする道具なのです。編集作業の必要に迫られて、先輩たちが考案した道具です。

 田島先生は原画を、必ずしも絵本の原寸通りに制作されるわけではありません。新作『そうべえときじむなー』の原画では、大きなものは絵本の原寸の2倍以上もあります。きっとシリーズの既刊も同様だったのだろうと思います。しかし、私たち編集者はそれでひるんではいけません。田島先生ご自身が気持ちを込めて制作するために必要な大きさであるからです。

 ラフや校正を自分の手で切って、貼って、折って、たたんで……手作業での編集作業が当たり前だった時代に熱く燃えて仕事をした先輩たちが残した〈昭和の編集者遺産〉だと、ぼくは秘かに認定しているのです。

 しかし今回は、この道具の出番はありませんでした。田島先生から送られてくる原画の画像を、テキストと一緒にPCでレイアウトして、ダミーを作り郵送する作業を何回もくり返しました。粘り強く何度でも、入稿する前も、入稿してからもこの作業はくり返されました。田島先生のこの集中力にこそ、「そうべえ」シリーズのヒットの秘密があると思います。

(童心社 橋口英二郎)