こどもの本

私がつくった本32
汐文社 門脇 大

(月刊「こどもの本」2012年2月号より)
はたらくロボット

『はたらくロボット(全3巻)』
富山 健/監修
2012年2月完結

「書籍編集者」というと、子どものころから文字の多い本をたくさん読んで、というイメージがあると思いますが、記憶する限り私が幼いころに読んでいた本は、「野球大百科」や「魚図鑑」など、文字の少ないものばかりでした。「文字の本を20冊読んだらお小遣いをあげる」などという両親が講じた苦肉の策により、かろうじて活字と接する機会が設けられたからこそ、私は現在この仕事に就いているのでしょう。ですから私が本のことを語るには、まずはそのことに感謝することから始めねばなりません。

 幼少のころの私のように「写真や絵がたくさん出てくる本であれば読む」、という子どもは今も少なくないと聞きます。自分が子どものときにどんな本を読みたかったかという記憶を辿ることが、今の私にとって企画を立てる上での大きなヒントになっています。今回紹介する「はたらくロボット」も、そんな私の経験をもとに企画したシリーズで、日本で活躍する、もしくは活躍が見込まれるロボットを写真で紹介しています。

 二足歩行ロボットの「ASIMO」や原発事故現場で活躍中の「Quince」、掃除機ロボット「ルンバ」などの誰もが知っている有名どころから、産業用ロボットアームの「MOTOMAN」、介護・医療支援向け「パートナーロボット」などの労働力として地道な貢献を果たすものまで、さまざまなロボットを紹介しています。メカニズムを詳細に解説することなどはいくらでも可能ですが、どんな子どもにも興味をもってもらえるようにロボットのかっこよさ、そしていかにすごい技術なのかを、シンプルに伝えることを目指しました。「これなら、子どものころの自分も手にしていただろう」ということが、目指すところにはあります。

 シリーズ監修者の富山健先生は、ロボット工学に熱心な千葉工業大学で教鞭を執られていますが、幼年から工学になじむことの大切さを、よくご自身の講演などで説かれています。ときに児童の理系離れが問題となりますが、たとえば「ロボット」や「宇宙」、「動物」といった子どもがすぐに関心を示すようなテーマは「理系への入口」として格好の分野です。そういった意味でもロボットを扱うこのシリーズの務めは、子どもの関心を惹きつけ、ひいては子どもの夢をはぐくむことではないかと思っています。

 シリーズ内では、小惑星探査機「はやぶさ」もロボット技術を駆使した宇宙船として取り上げています。日本中に夢や希望を与えたはやぶさの活躍を再現してもらいたいとねがうのは、すべての国民の思うところでしょう。たとえば、その一翼を担う「将来の科学者」を生み出すきっかけにこのシリーズがなればと、本に関わるひとりとして考えます。